with you
第3章 涙を拭ってくれる人
「どうかしたの?」


 六月に入り、少しずつ太陽の日差しが鋭くなってきた。


 真由は私の肩を叩き、私を呼んできたのだ。


 彼女は私の耳に唇を寄せ、小声で囁いてきたのだ。


「愛理の誕生日プレゼントを買いに行かない?」


「誕生日?」


 愛理の誕生日は七月と聞いた。一ヶ月前と考えるとそこまで早くはない。


 思わず大きな声を出したのか、真由は自分の唇に右手の人差し指を当て、静かにと合図する。


「いいよ」


 友達ってそういうものなんだ。素直に納得し、真由の提案を受け入れていた。


「いつ行く?」


「今度の日曜日はどう?」


 休みの日は一人で家ですごすことが多い。そんな友人の提案を笑顔で受け入れていた。


 そのとき、教室の扉が開き大村先生が入ってくる。


 私は自分の席に向き直ると、笑みをこぼす。


 女の子と買い物に行くのなんて小学生のとき以来で、いつになくそのことにどきどきしていた。
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