with you
 彼女は自分を呼んでもかまわないというだろうが、それは申し訳ない気がした。


 彼女の姿を見送り、学校に戻ることにした。



 ノートの入ったかばんを手に、キーを扉に差し込んだとき、近くで人の気配がした。


 何気なく振り返ると、そこには西原先輩の姿があったのだ。彼は一人で近くに誰もいない。


 彼の手には私と同じように教室の鍵が握られていた。


「一人?」


「忘れ物をしてしまったんです。愛理と別れた後だったので、言い出すのも忍びなくて」


「きっとそのことを聞いたほうが彼女は怒ると思うけど」


 彼はじっと私を見る。


「途中まで一緒に帰ろうか」


「大丈夫ですよ」


 あのときのことや、愛理が私を心配しているからそう言ってくれたんだろう。


「どうせ賢の家に行くところだったんだ。ついで」
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