with you
 顔をあげると、昨日の男の人ではない、もう一人の人が私との距離を詰めていた。


目が合うと、彼は屈託ない笑みを浮かべている。


ガラス玉のような目に私の姿が映っているのを確認し、一瞬だけど、息が止まるかと思った。それほどドキドキしていたのだ。


 彼の視線が真由に移る。そこでほっとしたのもつかの間、男の人らしい低い声が聞こえてきた。


「この子は真由ちゃんの友達?」


「友達の前原咲さんです」


「そっか。俺の名前はまだ言ってなかったよね。俺は依田賢って言うんだ。よろしくね」


 挨拶をされてしまった。私も自分の名前を名乗るべきなのかな。


 でも、真由が紹介してくれたから、挨拶だけでいいのかな。


 そんなことを延々と考えていると、彼が心配そうに眉をひそめていた。


「体調でも悪い?」


「あの」
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