with you
少し日の落ちた町並みに先輩の足が止まる。
私は暗がりの中にいる先輩に頭を下げる。
「暇だったらたまに遊びに着てよ。愛理も喜ぶと思う」
「ありがとうございます」
「また明日」
その言葉で別れを告げ、家の中に入る。鍵は開いていた。まだ父親が帰ってくるには早い時間だ。
玄関の扉を開けたとき、私の動きは止まっていた。
そこにいた人影を見て、胸がドキッとした。
鋭い目をした姉が私を睨む。今日は機嫌が悪い日なんだ。
「何、にやにやしているの? 気持ち悪い」
私は顔を背けた。上唇で下唇を覆い隠し、目を合わせないように洗面所に行き、手を洗い顔をすすぐ。そして姉がリビングに入った隙に階段をあがっていく。
ドアを閉めて、背筋を伸ばし目を閉じて天を仰ぐ。唇をぐいっとかみ締めた。
真由や愛理は家族との仲がすごくよさそうで、家にいるのが楽しいという気持ちがよく分からなかった。
この家では姉が中心となる。姉が私をどういおうとも、親は咎めない。ただ、私が文句を言えば反論が返ってくる。
そのことに失望したことはなかった。ただ、事実を受け入れ、抗おうとはしなかったのだ。
私は暗がりの中にいる先輩に頭を下げる。
「暇だったらたまに遊びに着てよ。愛理も喜ぶと思う」
「ありがとうございます」
「また明日」
その言葉で別れを告げ、家の中に入る。鍵は開いていた。まだ父親が帰ってくるには早い時間だ。
玄関の扉を開けたとき、私の動きは止まっていた。
そこにいた人影を見て、胸がドキッとした。
鋭い目をした姉が私を睨む。今日は機嫌が悪い日なんだ。
「何、にやにやしているの? 気持ち悪い」
私は顔を背けた。上唇で下唇を覆い隠し、目を合わせないように洗面所に行き、手を洗い顔をすすぐ。そして姉がリビングに入った隙に階段をあがっていく。
ドアを閉めて、背筋を伸ばし目を閉じて天を仰ぐ。唇をぐいっとかみ締めた。
真由や愛理は家族との仲がすごくよさそうで、家にいるのが楽しいという気持ちがよく分からなかった。
この家では姉が中心となる。姉が私をどういおうとも、親は咎めない。ただ、私が文句を言えば反論が返ってくる。
そのことに失望したことはなかった。ただ、事実を受け入れ、抗おうとはしなかったのだ。