with you
 私は友達の兄として以上の彼を全く知らない。彼がどんなことが好きで、どんなことを考えているのか。笑顔で満たされた彼の仮面の裏を覗くことはできない。


 私が知っているのは彼が中学のとき美術部だったこと、そして彼女がいたことないことくらいだった。


「誕生日パーティとかしたいよね」


「そんなことより期末テストは大丈夫なの? かなり怒られたんでしょう?」


 愛理の言葉に真由は顔を引きつらせる。目線を逸らすと、苦笑いを浮かべていた。


「大丈夫じゃない、かも。だって中間より範囲が広い」


「遊ぶのは夏休みにして、今はテスト勉強でもしなさい」


「愛理の誕生日はそうだよね。でも、咲の誕生日は十一月だから大丈夫」


「そのときは期末前だよ。冬休みかテスト後だね」


 彼女はしゅんと肩を落とす。誕生日の付近にお祝いをしようと目論んでいるようだ。


「一年に一回だよ」


「休みに入ってからでもいいんじゃないかな」


「それもいいね。クリスマスもあるし。だったら別々のほうがなんか楽しそう」


 二人の会話を遠目に見ながら思わず笑みをこぼしていた。


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