with you
 家というフレーズに頭の中から戸惑いや驚きが一気に消える。


「なら私の家を貸してあげる。日を選べば誰もいないし。それなら私と咲の誕生日を一緒にしてもいいよ」


 愛理は間髪入れずにそういっていた。


「いいね。それ」


 真由は愛理の言葉に笑顔を浮かべていた。


 愛理はそんな彼女の言葉に笑顔で答えている。


 彼女が意見を覆したのは偶然なんだろうか。


 真由と愛理は笑顔で話をしていた。


 二人はすごく優しくて、わたしに気を使ってくれていることは分かる。


 だが、わたしはいつも二人に対して一歩引いてしまっていた。


 それは各々に苦手意識があったわけではない。


 私自身に問題があることは十分承知していたのだ。


 真由が歩くのを止め、わたしをじっと見る。


「咲、鉛筆忘れてない?」


 その言葉に我に返る。手元にあるのは美術のテキストにスケッチブック。確かにない。


「とってくるね」

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