with you
 中から見る彼の部屋は本ばかりで、おもちゃらしきものは何もない。


机の端にはノートパソコンが一台と、問題集が重ねてある。


すごくシンプルで落ち着いた部屋だった。ポスターとかそうしたものも何一つない。



普段この部屋で何をしているんだろう。


 目の前に茶色の表紙の本を差し出され、それをめくる。


 そこに記されていた絵に私は心を奪われていた。


「すごい」


 絵というのは線を増やせばそれなりに見える。だが、そこに描かれた世界にはごまかしがなかった。


 細い一本の線で物を忠実に描き出している。


 思わず感嘆のため息を漏らし、彼を見る。


「先輩って何でもできるんですね」


「そんなことないよ。でも、絵を描くのは好きだったかな。昔からね。で、この辺りにあるものが作ったもの」
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