with you
 彼の指した先には紙粘土らしきもので作った動物や、手作りと分かる写真立てなどもあった。その一つずつが丁寧に作られている。


「先輩って苦手なことってないですよね。運動も得意だし、何でもできる」


「そんなことないよ。俺にだって苦手なことはたくさんあるって」


「そうですか?」


「料理は愛理に下手と言われるほどダメだし、人と話すのも苦手なんだよね。特に女の子相手だと」


 彼は苦笑いを浮かべていた。



「そういう風に見えませんよ。優しいし、だれとでも話ができるし、女の子の扱いに慣れているような気がしました」


 だからこそわたしがこうして彼と話をすることができたのだ。


「愛理や佳織がいるからそう見えるだけで、実際はそうでもないよ。面倒だし、言葉に気を遣わないといけないし、難しい」


 彼は大げさに肩をすくめる。
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