with you
 彼は子供のような笑みを浮かべる。


「そんなにガツガツする気にもならないんだよね。必死に彼女作ろうとしているやつとか見ると、ある意味すごいって思うよ。よくもそんなことに情熱を注げるなってね」


 そうおどけたように言う先輩に思わず笑ってしまっていた。


 彼の意外な一面を知っても、彼らしいと思ってしまっていた。


「咲? お兄ちゃん?」


 愛理の声が階下から聞こえる。


「行こうか」


 笑顔で声をかけてくれた先輩の言葉に、スケッチブックを返しながら頷いた。




 下に戻ると愛理がすでにケーキを準備してくれていた。


 私はさっきと同じ場所に座る。愛理はさっと四人分のケーキを並べてしまっていた。


 先輩の隣には宮脇先輩が座る。二人は笑顔で言葉を交わし、愛理とは違った意味で砕けているような気がした。


 私もいつかそんなふうに話せるようになるんだろうか。


 そこまで仲良くなれなくてもいい。でも、普通には話したいと思うようになっていた。
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