with you
 その様子を真由は見守り、彼女は少しだけ嬉しそうな顔をしていた。


 そう。彼は誰にでも優しい。そんなことは分かっていたはずだった。


「咲?」


「私たちも帰ろうか」


 愛理が私の肩を叩き、私は小さく頷いた。



 彼がわたしに優しくしてくれることで、彼に好意的に思われているんじゃないかと勘違いをしていた。


 そしてショックを受ける理由も自ずと気付いていた。


 真由と別れ、私達は言葉も交わさずに家への道を急ぐ。


 もうすぐ別れる場所にきたとき、愛理が口を開く。


「咲ってさ」


 雨が頬に降れ、腕に触れる。


「何?」


 笑えているか不安に思いながら愛理に問いかける。
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