乾柴烈火 Volatile affections
司さんは、

亜紀さんのルームメイトだから

知っているのだろう。

亜紀さんは薬を飲んだ日は

ものすごく体調が悪くなる。

少しの間ではあったけど

一緒に住んでいたことがあった私も

その事を知っていた。

司さんは、

本来男である身体を

女仕様に無理やり矯正した人だ。

それで自分の心には伴う事が出来たけど

自然の摂理に逆らった身体が

無理をし続けているのは

明らかだった。


あっけらかんとした顔で

自分の体験談を話してくれる司さんの

凄まじい人生に、接客中にも関わらず

私はぼろぼろと泣いてしまった事がある。

司さんは、その時

泣いてくれてありがとうと言って

笑ってくれたけど。


女性ホルモンを打ち続けた彼女だから

身体に負荷をかけ続ける辛さが

どれ位のものかを知りすぎていて

女よりも女だから

寿命が短くなっても痩せたいという

亜紀さんの気持ちも分かりすぎていて

それでも友達だから

生きて欲しいという司さんの葛藤も

見ているほうまで痛くなるほどに

自虐的な亜紀さんも

どっちもちゃんと救われますように。

そんなに重たい人生を生きていない私には

そう願ってあげることしかできなかった。

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