乾柴烈火 Volatile affections
ママが来てから緊張気味で固まっていた

新人さんにターゲットを変えたママは、

しなだれかかった男の上に

その大きな体ごと乗せ、

イケメンの新人さんと名刺交換をする。

「こんまにあ。素晴らしき香港の、夜の世界へようこそ。香港の夜の世界は、いかがです?」

「す、すごく活気がありますよね。」

「せやろぉ?これから色々な世界を知る事になりますよ?これからもよろしくお願いしますね。ああ、もっとお話したいけど・・・何だか混み始めているから、他の席にも行かなきゃ。でも、あなたは私のタイプだからこのままあなたとお話がしたい。」

終始上目遣いで話すママに

ママが乗っかった状態の男は

とうとうしびれを切らしたようで、

「重たいから、頼むから早くどいて!」
と言いながら、重たそうにママを持ち上げて突き放す。

「じゃあまた後で来ますから、ごゆっくり~。」
そう良いながら席を立ち、

「本当に、もう戻って来なくていいです!」

という男の声に押されるかのように、

席を外していった。

この10分と満たない短い会話の中で

私が作ったウィスキーは15杯。

さすがはママだ。

自分で飲むのはもちろん

お酒を飲ませる術にも長けている。

「あー、本当に重たかった。」

そういいながら、

男は隣のイケメン新人さんに、

「あれがここのママ。かなりの敏腕経営者だから、覚えておけよ。」

と真顔で言った。

そっか。今日はこの新人さんに

お店とママを教えるために来たのか。

心の中でお客さんの意見に同意していた。

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