乾柴烈火 Volatile affections
「え?そんなに長いの?それは、留学で?」

「いいえ、お仕事です。前職で香港ベースの客船に乗って、船員をしていたので。実際は香港に住んだのではなくて週に4回香港、というよりは、尖沙咀の港に居たっていう感じですかね?」

「へぇー、おもしろいねぇ。じゃあ、広東語もできるの?」

「残念ながら、広東語はあんまり分からないの。でも、アジア訛りの変わった英語なら得意ですよ。」

「そっか。でも英語ができるのか。船って、どんな船?」

「カジノ船です。」

「カジノ?」

「ええ。香港は法律で賭博が禁止しているから、香港の領海を離れて賭博をするの。もちろん観光船だから、他の国にも行きますよ。私が乗船した船は、香港と中国とベトナムをぐるぐる周遊していました。」

「へぇ。それで中国はどこに行っていたの?」

「海南島の海口と三亜、アモイ、広州がメインでしたね。だけど上海にも1度だけ行った事がありますよ。」

「じゃあ、中国は俺より色んな所に行っているわけか。」

「だけど、皆様がお仕事で行く深圳には、まだ行った事がなくって。一度は行ってみたいな。」

「ねぇ、船ってさ、どれくらいの大きさなの?」

「大きいですよ。5000人が乗れるくらいの大きさなので、もう動くホテルだと思ってもらえればいいかな?」

「具体的に、船員の仕事ってどんな感じ?」

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