乾柴烈火 Volatile affections
私は、船の生活をこよなく愛した。

単調で窮屈ではあったけれど、

ここはバックパッカーの旅など

比較にならない程に刺激的だった。

一通りの洗礼を受けて船の世界に

すっかり慣れた私は、

好奇心が抑えられずに、

仕事で使う広東語以外に

男女問わずたくさんの船員達に、

その国の簡単な言語や発音を教わった。

どこの国の言葉なのか、

雑踏で聞いても

一瞬で聞き分けができるまで。

挨拶はもちろん、

愛を表現する言葉、

いわゆるFuckに値する汚い言葉やら、

セックスして、

イキそうな時のイクの言い方など、

くだらないものも多かったけれど。

皆面白がって色々と教えてくれたし、

教わっていく中で、

一つ一つの国に

興味や関心を持った。

そして旅行したくらいでは

絶対に知り得ない文化を、

流行を、

音楽を、

歴史を、

ルールを教わった。

そうやって一緒に生活をして

仕事をしていく中で、

日本人の向こう側にある

私を見てくれた人達が、

私の友達に、

仲間になってくれて、

それは何より嬉しかった。


< 66 / 144 >

この作品をシェア

pagetop