乾柴烈火 Volatile affections
乗船して7ヶ月が経った頃、

多忙を極めた正月の航海の時の私は

とても疲れていて、不安だった。

アメリカ同時多発テロ、911は

少なからずこの業界にも影響を与え

乗船していたかなりの日本人が

クビを切られて、私も

その中の1人になる可能性が高かった。

それだけは絶対に嫌だった。

この船の上で見たいものは

まだたくさんあって

全てを見るまで

絶対に下船なんてしたくなかった。

するわけにいかなかった。

当時の私は遠距離恋愛をしていて、

彼氏のTommyはUSAで仕事をしていた。

彼は私と同郷の歴とした日本人で

Tommyというのは彼のEnglish nameだ。

そんな私の彼氏であるTommyのくれた

Happy New yearのメールからは

全く愛情が感じられず

それは更に私を落ち込ませた。

私に関心がなくなってしまった

かもしれない事が

私には許せなかった。


どうやって男が

こういう女の隙というか

不安を見抜いているのかは知らない。

ただ単に、

私がとても分かりやすい女

なのかもしれない。

多分、そうなのだろう。

その晩、

以前から散々アプローチしてきた

私を好きだというインドネシア人と

誘われるがままセックスした。

久しぶりのセックスは

何一つの甘さも愛情も情緒も恋もなく

ただ不快

それだけのものだった。

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