乾柴烈火 Volatile affections
發夢/Dream
航海の後で下船した私は

その足でYMCAに向かった。

礼拝に参加するためだ。

Justinから聖書をもらっていても

自発的に読もうとは思わなかった。

当然改宗する気もない、

その理由は至ってシンプルで

タバコを吸えなくなるのが

嫌だからだ。

「日本といえば八百万の神で、神様がありとあらゆる所に宿っているの。誕生したら神社、結婚式は教会、死んだらお寺。それは決していい加減だからじゃない。歴史的に宗教が弾圧された時代があったからで、時代によって弾圧される宗教が異なっていたの。世界中の文化は形を変えて最終的に日本に辿り着く。だけど地図を確認してご覧なさい。日本からハワイへ行くことはなかったでしょう?日本はそうやって世界中のありとあらゆる文化を吸収する最終的な受け皿だったのよ。その全てを許容するのが日本で、日本人なのよ。ねぇ、歴史って、とっても素敵でロマンチックだと思わない?」

それが正しいかどうかは分からないが

この手の知識を私に与え続けたのは

私の母だ。

そんなにも素晴らしい

アイデンティティーを捨てて

改宗するほど彼に恋をしていなかった。

彼はそれこそ

彼の全てを私に捧げたのに

私はいつでも薄情だ。


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