不器用な青年たちへ
千汰は

小学生にしては長身で

小学生にしては声が低く

小学生にしては目付きが悪い奴だった。



「やめろよ。こんな幼稚なこと」



僕は、耐える手段しか選ばなかったけど


千汰は、戦う手段を僕にくれた。



自分が同じ目に遭うかもしれないのに


みんなの前で僕を助けてくれた。



あの時も今も、僕の中での勇者は千汰だ。



何事にも恐れず、立ち向かう。



あれを



勇気と呼ぶんだ。




「助けてくれて、ありがとう」


それまで、学校で誰かと喋るなんてしたことがなかったから


僕は、ぎこちなくお礼を言った。



「別に。来いよっ」



手招きされて、入った図書室。



「あぁ千汰、どこ行ってたの?」

不登校気味だった彩夏と



「この本、読み終わった」

学級委員の珠樹が、そこにいた。




多分、アダムとイブの楽園がエデンだとしたら


僕にとっての楽園は、あの図書室だった。




だからかな?



今も本は大好きなんだ。
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