不器用な青年たちへ
「考え事?」


はっと、我に返る。


隣に座る珠樹が、少し笑っている。


「あれ?目開けながら寝てたの?」


まさか、そんな技術は持ってない。


「違うよ。なんか、昔のこと思い出してた」


「ちょっと、今のおじいさん臭い」


笑う珠樹。

本当、よく笑う。



「いいよ。じいさん臭くて結構!珠樹が、ばあさん役になってくれんでしょ?」

「やだやだ。私を巻き込まないで」



声を殺しながら笑った。



学級委員の珠樹は、小学生の頃はとても恐かった。


無口の無表情。


みんなから陰口を叩かれていたが


それすらもはね除ける強さが、彼女にはあった。



「苛めを黙認する教師なんか、私は教師と認めない」


ホームルームで、担任にそう怒鳴った。


強さは、彼女の最大の武器であり




最大の防御だったんだ。

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