Maidoll Factory
帰って来た彼女の手には、小さな紙袋が三つ。

白い紙袋には、オシャレなデザインのロゴが印刷されている。

「どこまで行ってたんだよ、るちる。もう腹減って腹減って」

腹に手を当てて恨みがましい発言をしてしまう。

「ごめんなさいです、天空宮港まで行ってたんですよぉ」

僕の恨み言を気にする風でもなく、るちるはご機嫌の体で紙袋を休憩室のテーブルの上に置いた。

「『カフェ・ド・テンクーミヤ』って知ってます?天空宮港の近くにオープンした、若い女の子達に人気のカフェレストランなんです。シーフードの美味しい店でね、毎日ランチタイムには行列が出来るほどの人気店なんですけど、実は今日は!」

溜めを作って、るちるがテーブルの上の紙袋に対して両手をヒラヒラさせる。

「『カフェ・ド・テンクーミヤ』一番人気のテイクアウトランチメニュー、小エビサラダのサンドイッチを購入して参りましたー!」

「……」

うん、そりゃ有り難い。

有り難いんだけど…。

じっとるちるの出で立ちを見る。

毎日ランチタイムには行列が出来るほどの人気店に、その寝癖つけたままの髪の毛で、白いツナギのまま並んだ訳か、お前…。

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