Maidoll Factory
「さぁ」

パンパンと。

おやっさんが手を叩いた。

「仕事再開だ、仕事仕事。いつまでも感傷に浸ってちゃいけねぇ」

自分の持ち場である地下室に、おやっさんが降りていく。

…知っている。

あんなドライな態度だけど、おやっさんは前も自分の手がけたメイドールの寿命が来た事を知って、地下室でさめざめと泣いていた。

僕もるちるも、気づかない振りをしていてあげてるけど。

仕事をしながら僕は思う。

愛してくれるお客様に買われていくメイドールも幸せだけど、天寿を全うした時、創造主である人形技師に涙してもらえるメイドールもまた、とても幸福な生涯を送れたのではないかなと…。

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