Maidoll Factory
店内の作業部屋。

造形や組み立ての作業に使う作業台に突っ伏したまま、一人の女の子が呆けていた。

僕と同じツナギを着ているが、サイズが大きいのか体が小さいのか、随分と余ってブカブカに見える。

かけている眼鏡は半分近くずり下がり、淡い栗色セミロングの髪の毛は、固い作業台に突っ伏して寝ていたせいで、あちこちハネて寝癖になっている。

「はにゃあぁ~あ…?…先輩も徹夜ですかぁ…?」

「馬鹿、もう朝だ。僕は今出勤してきたんだよ」

そう言って彼女の鼻先にコーヒーカップを突き出してやった。

このだらしのない彼女は、若葉るちる。

今年この工房に入ったばかりの人形技師見習いだ。

といっても僕より一つ年下の18歳。

つまり僕もまだまだ見習いには違いないのだけれど。

「うわっ、うわぁ~あっ!」

カップに口をつけ、るちるが顔をしかめる。

「先輩これ…お砂糖入ってないじゃないですかぁ!」

「眠気覚ましにはちょうどいいだろ?」

僕はクスリと笑ってやった。

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