Maidoll Factory

僕は完成した魔法エンジンを慎重に抱きかかえながら店へと上がっていく。

「おかえり、るちる。まだ雨は降ってる？」

「何呑気な事言ってるんですか！」

店の前で傘を閉じていたるちるの様子は、どこか慌てていた。

ツナギが傘から飛び散った雫で濡れるのも厭わず、バタバタと駆け込んでいる。

おっとりしたるちるが、こんなに血相変えているのも珍しい。

「さっきおつかいの途中で6番街の交差点のとこ通ったんです！」

6番街は市街地でもかなり人通りの多いところだ。

バーや居酒屋が集中している歓楽街でもあり、昼間はともかく夜が更けると、天空宮には珍しくどこかいかがわしい雰囲気を醸し出す。

この街にしては、少々治安が悪いと言える場所だった。