Maidoll Factory
建物の陰といっても、気にかけて見ればわからないというほどの位置ではない。

るちる以外の通行人がこのメイドールに気づかなかったのは、無関心だったからに他ならない。

るちるもメイドールファクトリーの人形技師だ。

最近、メイドールに限らず自動人形の不法投棄が多発している為、普段歩く時から気にかけていたのだろう。

「おい、大丈夫か?おい」

すぐに倒れたメイドールの傍らにしゃがみ込み、声をかける。

…道行く人々が、何事かとこちらに視線を送るのが見えた。

「何…?」

「行き倒れみたいだよ?」

「今時行き倒れなんて…」

「人間じゃないよ、自動人形みたい」

「じゃあ壊れて捨てられてたんじゃないの?」

そんな声がヒソヒソと聞こえてくる。

特に最後の一言には感情を逆撫でにされる。

『じゃあ壊れて捨てられてたんじゃないの?』

「あんた達ねぇ!」

るちるがカッとなって立ち上がり、通行人達に食って掛かる!

「自動人形だから何なの!機械だったら死にそうでも助けないの?見殺しなの!?」

「よせ、るちる」

興奮するるちるに、僕は声をかける。

冷静さを保ってはいたものの、僕も彼女と同じ気持ちだった。

『自動人形だから』

『人間じゃないから』

そんな認識が、メイドール達を物のように捨てる行為へと繋がるのだ。

< 57 / 90 >

この作品をシェア

pagetop