Maidoll Factory
「だったらこの子はどうするんですか?記憶がないままじゃ持ち主の家にも帰れないし」

困惑した表情のるちる。

「この子は…『メイドールの揺りかご』に入れてやろうと思うんだ」

僕はメイドールの少女の髪を撫でながら言った。

まだ見ぬご主人様を待ちながら店内の一室で眠り続ける、数体のメイドール達。

彼女達は新品でまだ目覚めた事のないメイドールだけれど、この子もその仲間に入れてやろうと思うのだ。

勿論、これから新しいメイドールを買い求めに来るお客様達にわかるように『Used(中古)』の表示はしなければならないけれど。

中古という言い方はしたくないけれど、何も知らないお客様に対して嘘偽りはあってはならない。

でも逆に、そんな事情を知った上でも彼女を買い取ってくれるような心優しいお客様ならば、二度と彼女は不法投棄などという悲しい目に遭う事はない。

僕はそう思うのだ。

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