Maidoll Factory
「ん…」

しばらくして、メイドールの少女は目を覚ます。

「おはよう、よく眠れたかい?」

僕は優しく微笑みながら、彼女に声をかける。

「……」

ぼんやりと、夢見心地で僕の顔を見ながら、彼女は言葉を紡ぐ。

「おはようございます…貴方は私のご主人様ですか…?」

実は彼女が眠っている間に、僕は彼女の記憶を『初期化』しておいた。

完全にメモリだけを新品メイドールと同様の状態にしておいたのだ。

彼女がかつて主と共に過ごしていた事を忘れてしまうように。

これからの新しい人生を、何の疑いもなく送れるように。

「僕は君のご主人様じゃないよ」

僕は苦笑いする。

「貴女は『生まれたばかりの』メイドールなんです。貴女はこれからご主人様によって選ばれるまで、このメイドールファクトリーで友達のメイドールと一緒に、楽しみに待っているといいですよ」

るちるが彼女にニッコリと微笑んだ。

…それは、嘘。

彼女を傷つけない為の、優しい嘘だった。

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