Maidoll Factory
まだ記憶が曖昧なのか。

とろんとした瞳のままで。

「そうなのですか…」

メイドールの少女はぼんやりと返事する。

意識がハッキリしないのは、記憶をいじったせいだろう。

可哀相だけれど、直にしっかり安定してくる。

「じゃあ、君がこのメイドールファクトリーにいる間の、仮の名前をつけてあげようか」

僕は彼女の柔らかな髪の毛を撫でる。

「んー…そうだな…『ソフィア』。ソフィアなんていうのはどうだい?」

即興の名前だけれど。

「…ソフィア…」

言葉にして、その響きを確かめるように少女は呟き。

「有り難うございます…気に入りました」

こちらまで頬が緩むような可愛らしい笑顔を浮かべる。

だけど、これはあくまでこの工房内にいる時だけの仮の名前。

本当の…そして『新しい』名前は、彼女が新しい主と巡り合った時につけてもらえる。

それまでは、彼女はしばし夢の中にいる事になる。

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