甘く柔らかく愛して
「今義父と住んでて、私が6歳の頃からね。…その人は知哉の本当のお父さんなんだ。…それで、私の本当のお父さんは……知哉の今の義父なんだ。」
息を呑む。
父親が入れ替わった、と言っている。
可愛の実の父親が阿山の母親と再婚。
阿山の実の父親が可愛の母親と再婚。
「信じられない?」
俺の腕の中で笑う可愛の目は空っぽで、赤い口元は無理矢理上がっている。
作り物の不気味な笑み。
「信じるよ」
一瞬目を見開いた可愛に、表情の色が戻っていく。
ゆっくりと、涙が頬を伝う。