甘く柔らかく愛して


 私は昔の、平和で穏やか家庭が好きだった。



 あの生活の中で生きる事が、何よりの至福だった。




 お父様は、きっと知哉ちゃんに暴力を振るってるんじゃないのか。とか


 知哉ちゃんのお母さんは何で私のお父様を選んだのか。とか


 知哉ちゃんの細い首や、手足に出来た沈んだ青紫の痣を見て思う。




 私はお父様からの暴力から逃れた。


 でも、幸せな家庭を失った。




 知哉ちゃんは、幸せな家庭を失って、お父様に暴力を振るわれている。




「大丈夫?……ごめんね」



 
 言う度に、平気だよと笑う知哉ちゃん。



 きっと我慢をしてるんだろう。



 知哉ちゃんの事だ、きっと本気を出したらお父様なんてすぐボコボコに出来る。




 けど、それをしないのは…お母さんを守りたいからと、きっと私のお父様だったから。




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