甘く柔らかく愛して

 

 周りはすごく五月蝿くて、こっちには見向きもしない。



 今が昼休みで良かったと、心のどこかで思った。





「何言ってんのっ?頭可笑しいんじゃない…っ!?」





 狂気のはらんだ叫びは、掠れた小さな呟きになって花音ちゃんの口から出てきた。



 初めて聞く声。



 バカみたいだと、頭の中で何度も思った。



 止めろと、落ち着けと、心の闇を消そうとする。





 亜々人の事、知哉ちゃんの事、お母さんの事、お父さんの事、お父様の事、知哉ちゃんのお母さんの事を考えなきゃ…、考えなきゃ




 でも…


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