non title
唇が離れる時、ハルナは小さく口を開けた。
そこからふぅと息を吐いて、睫毛と睫毛が触れるくらいの距離で目と目が合う。
俺はなんだか照れ臭くて笑ってしまった。
ハルナも釣られて小さく笑う。その息が頬をくすぐった。
「…おやすみ」
俺がそう言うと、ハルナはうん、と頷いて目を閉じた。
いつもはツンツンするくせに、こんな時だけ俺の胸に擦り寄ってくる。
本当に猫みたいだ。
のんびりまったりとした、この子の、この子が作り出す柔らかい空間。
ハルナの一番気持ちいい場所を、壊したくない。けど、俺も交ざってみたい。
矛盾してるように聞こえるけど、俺はそれを許された唯一なんだよ。
ずっと一緒にいたい。
この子の作る世界で、優しい世界で、この子と一緒に過ごせたら。
それって、とても幸せなことだと思うんだ。
そんな我が儘を、現実は許してくれないけれど。