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「宮澤さんの奥様ですか?」

その人は、ニコニコと素晴らしい営業スマイルだ。
ハルナは立ち上がって、頭を下げた。
…いや待て。
今、奥様って言った?

「あの、…奥様ではないです」

ユウ…あいつ…。
今度会う時、覚えてろ。

「あれ?宮澤さんから先程お電話で都合が悪くなったから今日は奥様がお一人で来られるって…」
「あの人、虚言癖があるんで、気にしないで下さい」
「はぁ…」

本当だったら、ユウもこの場にいるはずだったんだ。
それなのにアイツ、急な仕事で都合が悪くなったとかで。
その連絡が来たのもたった今だ。
今さら不動産屋にドタキャンも出来まい。だから大人しく部屋探しに勤しむとする。

この小太りの眼鏡の人は、鈴木さんというらしい。今しがた受け取った名刺にそう書いてあった。
ハルナは後部座席に乗せられ、よく分からないが、これからユウが予めピックアップしておいた物件を実際に見て回るそうで。

正直一人じゃかなり心細い。
人見知りだし、今初めて会った人と数時間二人きりなんて、ハルナにとって拷問以外の何ものでもなかった。
しかも、さっきからルームミラーでちらちらこっちを見てくるし。ユウが変なことを吹き込んだせいだ。
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