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「柏木さん…でしたっけ?宮澤さんとは、婚約されてるんですか?」
「いいえ」
「では、どのようなご関係で?」
「遠い親戚です」
ちょっと無理がある。
納得はしていないみたいだが、鈴木さんはそれ以上何も尋ねてこなかった。
一件目の物件は、学校へ向かう電車の窓からよく見ていた団地の一角にあるアパートだった。
今年に出来たばかりだそうで、かなり真新しい風貌。
防犯設備が売りらしい。
「若い方に人気の物件でして。景色も良いですし、近くにお店も何だってありますよ」
広い部屋だった。
キッチン、ベランダ、浴室…どれを取っても今ハルナが住んでいる部屋の倍くらいの広さ。
「駐車場完備、ネット完備で、敷金も今ならお安くなっておりますよ」
「あの……家賃って、どれくらいなんですか?」
「えーと、確か…」
鈴木さんの台詞に、背中を冷たい汗が伝った。
…びっくりした。
でも、そっか、今のユウならこれくらい全然余裕なんだもんね。