海の少女と空の少年
彼は町を見つめるのを止めて、反対側へと視線を移した。
そこには、途方もなく広い世界が広がっていた。
極僅かな一瞬、彼の瞳に恐怖に似た感情が走った。
しかし直ぐにそれは消え、今、彼の瞳は強い意志を讃えていた。
彼は足元にある、町と外の世界とを隔てる境界線を確認すると、最後に少し後ろの町を振り返った。
町人が持つライトの光がチラチラ光っているのがここからでも見えた。
町人達は今も必死に彼を探しているのだろう。
彼は、消え入りそうな微かな声で
「さよなら。」
と呟いた。
そして、もう一度町に背を向け、境界線を飛び越えた。