海の少女と空の少年
「さぁ、どうぞお進み下さい。」
声を掛けられた事で、ハッと前を見た。
扉は今はもう広々とその口を開けていた。
男達が恭しく頭を下げて、手を扉の方へと差し出している。
シオンは一つ呼吸をして、一歩踏み出した。
足が、鉄の塊になってしまった様に重かった。
それでも強いて足を動かし、1歩1歩扉の方へと向かっていった。
たいした距離でも無いのに、中に入るまで随分時間をかけてしまった気がする。
「では、また日が沈んだ頃にお迎え致します。」
男が一つお辞儀して、今度は扉を閉めにかかった。
バタンと内部に音が響き、シオンは静寂の中に一人残された。