オレの相棒。
また女だから、…?
何を言われるかとビクビクしていたら、記者から思いがけない言葉が聞けた。
「驚いたよ。七月からの予選、初戦で四打数四安打。通算打率が六割を超えている。そして…もっとスゴいのが……」
「盗塁阻止率、でしょ?」
記者の言葉を遮ったのは、さっきまでインタビューを受けていたはずの東だった。
「そう、それ。予選から一度も盗塁を許してない」
「肩鍛えましたから。女だから無理だって言われるのが嫌だったから」
「それにしてもスゴい数字だ。東くんと大和くんがああ言うのもわかるよ」
「仙崎さん、それは秘密で」
「わかったわかった」
東がこんなに記者の人と親しく話してるの、初めて見た…。
そのあと、「ユニフォームに着替えてくる」と言って東は部室に行ってしまい、俺は仙崎さんにまたインタビューをされた。
そして…こっそりと教えてくれた。
『東くんにね、前に聞いたことがあるんだ。ここまで無失点で投げ続けてるけど、前と何か変わったのか?ってね。そしたら彼、こう言ったんだ』
---今までと違って、オレの前には信頼できるキャッチャーが座ってますから。そいつに球受けてもらうために、ただがむしゃらに投げてるだけです。