フロックス



「にちか…お前は、婚約者なんだ。もっと自信をもて…な?」


「……………」



自信なんかナイに決まってる。私が東郷の家にいていいのかさえわからないのに…



「そんな顔するな。世の女性、皆が羨む東郷の婚約者なんだよ。わかったか?私が1番幸せなんだって顔をしなくちゃ…な?」


「はい…」



幸せな顔…なんか出来ない。不安しかない。



いつ捨てられてもおかしくない私…そんな私が…幸せな顔?



そんな…



「にちか!」

「あっ、莱輝さん…」

「お前はこっちだ。婚約指輪を渡しておく…あとは…」

「莱輝さん!」

「なんだ?」

「本当にいいんですか?」

「悪いわけないだろ。」




莱輝さんは、それだけ言うと…隣の部屋に入っていった。



“悪いわけない”…でもいいわけでもないんだよね?


< 98 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop