好きになった方が負け
「見付けた!!」


右手を掴まれて振り向くと、笑顔の龍くんがいた。


「焦ったー!!気付いたら笑美いねぇし」


あー…ヤバ。

ホッとしたら、今度は泣きそうだよ。


「笑美…?」


覗き込んでくる龍くんにはバレたくなくて、プイッと顔を背ける。


「……行こう」


そう言って歩き始めた龍くん。

あたしの手はまだ握られたままで、引っ張られながら足を動かす。


やっと人込みを抜けた場所は静かな海辺。

さっきまでの賑やかな世界は、もう嘘みたい。


「笑美、最近何かあった?」


「え?」


「や、今日元気ないような気がして」
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