好きになった方が負け
「あれ?大野くん?」


あたし達の席の横を通った男の人に、突然声をかけられた。


「青木専務!!お疲れ様です」


その人を確認するなり、スッと立ち上がって挨拶をする龍くん。


誰?仕事の人?


「偶然だね。お、彼女?あー…なるほど」


よく分からないけど、とりあえず”こんばんは”とだけ言ってペコリと頭を下げた。


「いや、前から仕事熱心だったけど、最近の大野くんは更にいい仕事するなーと思ってたら、もしかして彼女のお陰かな?」


「え…いや…」


こんなにたじろぐ龍くんは初めて見たかも。

普通に否定してくれて大丈夫なのに、どうしたんだろ…?


「おっと、邪魔して悪かったね。私も家族ときているんだ。じゃあ次のプログラムも期待してるよ」


「はい、失礼します」


謎のおじさんは嵐のように去って行った。
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