好きになった方が負け
「笑美!!笑美ってば!!」


ぬっと友達の加奈子の顔が近付いてきた。


「うわ!?いきなり何!?」


急いで距離をとって、加奈子を見上げる。


「ずっと呼んでるっつーの!!」


プクッと頬を膨らませた加奈子に、ジッと睨まれる。


「え?嘘っ」


「もう。またあの人のこと考えてたの?」


「う…っ」


図星をつかれて、言い返せなくなったあたしは……

安田笑美、高校三年生。


一目惚れなんて、生まれて初めてで、どうしたらいいのかも分かんない。


「その一目惚れからそろそろ一週間?会いには行かないの?」


「うー…。会いに行きたくても、どこの誰かも分かんないし」


どうすることもできないんだってば。


「は?会った場所に行けば?運がよければ会えるでしょ」
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