好きになった方が負け
「あたし…役立たずかな?」


「は?何が?」


怪訝そうな声が、あたしに向けられる。

ガヤガヤと賑わう中、ハッキリと聞こえる慶太の声。


「龍くんの役に立ちたいのに…」


意味なんか全然分からないはずの慶太は、一つため息を吐いて……


「その悩み、一瞬だけ忘れさせてやろうか?」


「え?」


驚いて顔を上げたと同時に、慶太の顔が近付いてきた。

何が起きたのか分からなくて、目をパチクリさせるあたし。


「お前、隙あり過ぎ」


唇が離れると、真っ直ぐな慶太の目と目が合った。

は…?


「あ、保健室でも油断してんじゃねーよ」


最後にそう捨て台詞を吐いていなくなってしまった。


保健室…?

え!?まさかあの夢!!


……だからあんなにリアルな感触が残ってたんだ。
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