好きになった方が負け
本当にすぐに、龍くんの黒い車が家まできてくれた。


「いきなりごめんな?親大丈夫だった?」


「うん、なんとか」


助手席に乗り込むと、いつもの香りに包まれた。

すごく落ち着く…。


「んー…どこ行くかなー」


車がゆっくりと動き始めた。


「あはは。本当に行き先決めてないんだ?」


「決めてないっすねー。俺、基本いきあたりばったりだし」


「確かに、龍くんの呼び出しはいっつも唐突だよね」


前のご飯も、今日暇?的な感じだったし。

また一つ、龍くんのこと知れたのかな。


「じゃあ何であたし誘ってくれたの?他にも友達たくさんいそうなのに」


別に何かを期待したわけじゃない。

本当に不思議に思ったから聞いただけ。


「ん?笑美って悩みなさそうじゃん?気が晴れるんだよなー」


この言葉に隠された龍くんの”想い”を、あたしはまだ知らない。
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