好きになった方が負け
「ん?もしかして笑美、風呂上がりだった?」


「えっ…うん。何で分かったの?」


「すげぇ今シャンプーの香りがした」


龍くんの細い指が、あたしの髪の毛を優しくすくう。


「超サラサラだし」


スルッと指を通し、最後にポンポンと頭を撫でた。


ドキドキし過ぎて、少し息苦しい。

こんな簡単に触れられるなんて思わなかった…。


「……そろそろ車に戻ろうか?」


その言葉と同時に、スルリと解放されたあたしの右手。


龍くんの後ろ姿を見ながら、ドキドキうるさい胸は少し安心してた。

けど、ちょっとだけ…物足りなく感じてしまう。


……もっと触れて欲しい。

もっと触れたいよ…。


龍くんは?

何とも思わないの…?

あたしそんなに魅力ない?
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