好きになった方が負け
車に戻っても、ハンドルを握ったまま動かす気配がない。

横顔も何だか辛そうに見える。


「龍くん…?」


何でそんな顔してるの?


少しの間の後、真っ直ぐ前を向いたまま龍くんが口を開いた。


「慶太とはあれから何かあった?」


「えっ…慶太?」


予想外の名前が出てきて、あたしは動揺を隠せなかった。


「ははっ。その反応はまじで何かあったんだ」


笑ってはいるけど、やっぱり様子がおかしいよ…。


「……好きって言われたわけじゃないけど、告白みたいなことされた」


龍くんにだけは嘘をつきたくなかった。

ううん…卑怯なあたしは、もしかしたら何か期待してたのかも。


「そっか…慶太は伝えたんだ」


ただ前を見つめたまま、ボソッと呟いた。

そういえば、自分に似てるって言ってたような…。


それって、どういうこと?
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