好きになった方が負け
「……俺、前に話すって言ったじゃん?」


前?

一瞬何のことか分からなかった。


「俺さ、高校の頃ずっと好きな奴がいたの」


イマイチ理解できないまま、ただ黙って話を聞くことにした。


「でも素直になれなくて、気付いたら彼氏ができてた。その頃の俺ってバカだったから、いきなりキスもした」


え?それって…慶太と同じ?


「けどちゃんとした言葉では伝えられなくて、未練がましく同じ大学に進学した」


同じ大学…?


「努力の甲斐あって、その子と付き合うことができたんだけど…些細なケンカが原因で別れた」


少しずつあたしにも話が飲み込めてきた。


「別れてからもずっと好きだったけど、素直になれなくて…そのまま卒業」


ギュッとハンドルを握ったのが分かった。


「それから忘れるために色んな人と付き合ったけど、ある日ハガキが届いた。結婚するって」


「それが…朋さん?」
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