好きになった方が負け
「つまんねぇ話して悪かったな」


ブオンッと音を立てて、車のエンジンがかかった。


「ううん、全然。役には立たないけど、また話ぐらい聞くよ」


本当は聞きたくなんてない。

けど、龍くんが悩んでる方が辛い。


「ははっ、ありがとう。笑美はいい奴だな」


ガシガシと少し力強く頭を撫でられる。

大きな手にあたしはまたドキッとする。


「笑美も何かあったら、遠慮なく俺に言えよ?特に慶太は要注意なっ」


ニッていたずらっ子みたいに笑う龍くん。

あたしの気持ちも知らないくせに…。


「じゃあ困ったときは駆け付けてくれる?」


「当然!!今俺の人生になくてはならないものの一位は仕事だけど、二位は笑美だからっ」


即答してくれたことがすごくうれしいのに、更にいい言葉をくれた。


「二位ー?」


わざと拗ねたフリして言ってみる。


「バーカ。仕事が一位とか逆にリアルじゃね?」
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