好きになった方が負け
慶太に手を振ってから、あたしは携帯をパチンと開けた。


不在着信5件…?


初めて見た数字に違和感を感じながら、ボタンを押す。


「え…?」


ディスプレイに表示された名前に、さっきとは違う胸の音が鳴る。


「笑美」


そして、それとほぼ同時にあたしを呼ぶ声がした。

振り返らなくても分かるよ。


慶太の声より少し低くて、優しく響く声。


あたしが忘れるわけがない。


「龍…くん?」


ディスプレイに表示されたのと同じ名前を、あたしはその人に呟いた。


「何で…?」


今頃どうしたの?

この二週間全く連絡なかったのに……

何で今、目の前にいるの?


このときあたしは、息をちゃんとしてたかな?
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