好きになった方が負け
テンションがいつにも増して低い。

何で…?


「……今、アンタん家の前」


あたしも慶太の前ではなぜか素直になれなくて、ぶっきらぼうに言い放った。


あたしが言った瞬間電話が切れて、慶太の家から階段を駆け降りる音が響いた。

そしてガチャッと勢いよくドアが開いた。


「何か用?」


明らかに急いで駆け付けてくれたのに、顔を出した慶太はいつも通りで……


「笑美!?何笑ってんだ!!」


つい吹き出してしまった。

どこまでかわいいんだか。


「よしよし。ほら、餌だよ」


慶太の頭を撫でて、鞄からクッキーを取り出した。

無反応でそれを受け取った後、ポツリと小さく呟いた。


「……ありがとう」


「え!?」


「つか、怒ってねーの?」


「は!?」
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