プリシラ
初めは全然普通だったんだ。
授業中よく当てられるなって思う程度で。
そのうち放課後になると教室にやってきては何かと話しかけたり、帰り道に突然現れたりする。
でも僕は別におかしい事だと思わなかった。
先生も楽しそうだったし、優しくしてくれたし。
そういうの嫌いじゃない。
相手が嬉しそうならそれでいいって感じで。
相手が優しくしてくれるなら僕も優しくできる。
友達の何人かはたまらなくいいって言ってた。
教育実習の先生とヤリたいって言ってた。
たぶん先生はそれを知っている。
そういう女だった。
僕が思う「先生」っていう人種と全然違う「女」だった。
「ねえ、仁。新しい水着買ったんだー」
僕の事は呼捨てで、机の上に頬杖をつく。
ここは教室なんだけどさ。
それに先生がどんな水着買ったとかどうでもいいんだけど、ちょっとは食いついてみせないと悪いよなあなんて思ったりして話を合わせる。
そのほうが先生が喜ぶから。
「へえー、どんなの?」
一応訊いてみると先生はふふっと含み笑いをして、内緒と言う。
別に聞きたくないからいいんだけど。
どう? 私に興味あるでしょ?
そんな態度と顔つきに気分は萎える。
他の奴らの嫉妬の視線も鬱陶しい。