ウォーターマン
 磨生は、宰政執務室で、沈思(ちんし)している。
(例え、世界大戦になろうとも、私は構わない)
 磨生は魂にそう言い聞かせていた。
(一人の国民の身を守れぬ政府が、一国の民を護持(ごじ)できる訳がない)

 高山達一番隊に続いて、ケーソン攻略に向かっていた二番隊も、核兵器を壊絶(かいぜつ)していた。高山は二番隊長のコウジより、作戦完遂(かんすい)の通告を受けた。高山は日本海上で待機している連合艦隊に、
「怒りの脱出作戦、第一段階完了。これより第二段階に入る」
 と伝送した。
「これからが本番だ。全員心を今一度引き締めよ」
 一番隊は、三十名に減少していた。高山はロボットとはいえ、彼等の愛国心、殉国(じゅんこく)の気節に感服せざるをえなかった。
(果たしてこの内の何体が、故国へ帰ることができるだろうか)
 高山はロボット犯罪防止官達との共闘を通じて、
(人間とは、正義のために尽くせる者をいうのだ。ロボットだろうが、サイボーグだろうが、ヒトだろうが関係ない)
 と痛感するようになっていた。
(こいつらとなら、死んでもいい)
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