ウォーターマン
 磨生は、
「もし、八月三十一日迄に、納得のいく返答が無い場合は、北朝鮮との全面戦争もやむなし」
 という公式発表を出した。
 日本政府は、小泉内閣以降一貫して、北朝鮮による日本人拉致事件の解明を、北朝鮮、国連に訴え続けている。北朝鮮の応答は、
「拉致問題は、二〇〇二年に解決済みである。日本政府はそれよりも、過去の植民地支配と従軍慰安婦への償い、謝罪をせよ」
 とオウム返しを繰り返すのみであった。
 更に、
「日本政府は拉致事件を出汁(だし)にして、この度の侵略を正当化しようとしている。朝鮮民主主義人民共和国は、如何なる手段を使ってでも、日帝の新たなる侵攻には屈しない」
 と益々硬化していった。日朝関係は、最早開戦あるのみ、という政情の範疇(はんちゅう)に、進撃していったのである。
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